地域とつながる子育て 助産師 川口眞理子
公開日:2023年03月19日 最終更新日:2023年08月07日
地域とつながる子育て応援
社団法人千葉県助産師会
川口助産所 所長 川口眞理子
電話番号 047-351-5550
公式HPはこちら
浦安の堀江で川口助産所を開業し、地域の母子保健指導を中心に仕事をさせていただいて18年になろうとしています。
先日も朝早く電話がありました。「おっぱいが詰まって、パンパンで赤ちゃんも泣いてばかりです」
お母さんの声はいまにも泣き出しそうに沈んでいます。聞いてみると産後1か月、疲れもピークに達しているようです。出産後の母体は劇的なホルモン変動の嵐に見舞われ、精神的にも影響を及ぼすとされるマタニティーブルーなどとの関連も深いと言われています。
慣れない子育てのスタート、何もかもが不安です。
「なぜ泣いているの?」「おむつも替えたし、おっぱいも飲んだのに」「どうしてほしいの?」「どこか具合が悪い?」「おっぱいが足りない?」
不安そして不安、時には「母親失格」という烙印を自分に押したりしかねない状態になり、そんな日々を過ごすことになるのです。3時間おきならまだしも、へたをすると1時間おきの授乳、抱きなれない緊張感で肩はコリ、手首は腱鞘炎、睡眠不足でくたくたになります。赤ちゃんの登場で生活は一変するのです。
昔だって産後のホルモン変動は同じだったはず、生活環境だって今より不便なのに赤ちゃんの扱いが現代のように大変ではなかったのです。
昭和30年代、特に「三丁目の夕日」の時代をイメージしてください、周りには子どもがたくさんいて、赤ちゃんに触れる機会は多くありました。いうならば赤ちゃんの取り扱いに慣れていたのです。そして、困ったことがあったなら家には子育ての先輩がいて、近所にはおせっかいおばさんがたくさんいました。まさに地域で子育てする環境にあったのです。
子どもが育つ環境に必要なものは多くの大人や子どもとのかかわりです。その中で社会性が育って行きます。ですが近年、「核家族化」や「子育ては母親の役割」という意識が、地域から母子を引き離し、出産後「今日は誰とも話さなかった」「外にも出なかった」そんなことの日々が子育てを孤独にします。
子育て不安は母親や家庭だけの問題ではなく、孤独な子育てにならないよう地域連携には地域の子育て支援団体や専門職、行政の支援は欠かすことができません。
お隣のおばさんに声をかける感覚で是非、一歩外に出る勇気と環境の一端を担える子育て支援の輪を利用していただきたいと思います。そして専門家としての助産師も活用していただけたら幸せです。
※このコラムは2013年3月にNPO法人i-netより発行の「赤ちゃんを迎える家族のための新生活応援BOOK」に掲載された内容を転載しています。